2019.08.29
  セミナー情報   不動産投資のノウハウ
相続時精算課税の特別控除 2500万円までなら贈与税なし
両親が住む家の相続税評価額は土地、建物合計で約3500万円で、介護施設に移る際は売却します。
所有者の父が認知症になると売りにくくなる恐れがあるので早めに私に贈与してほしいのですが、贈与税が心配です。
父が死亡した場合の相続人は母、私、弟の3人です。
こうしたケースで最近よく使われるのは「民事信託」です。
親(委託者)が自宅の所有名義を子(受託者)に移転して、親自身は受益者として住み続ける仕組みです。
親が自宅の所有名義を子に移すと通常は贈与税がかかりますが、信託による移転では課税されません。
所有名義は子に移っており、子の判断で家を売却できるため、認知症対策として注目されています。
ただ、将来の相続人が親の家を売却することに全員合意していて、しかも、相続税がかかる可能性がなければ「相続時精算課税」を使う手もあります。
相続時精算課税とは累計贈与額が特別控除(2500万円)の範囲内なら何回贈与しても贈与税はかからない仕組みです。
2500万円を超えた分は20%の税率で贈与税がかかります。
また、相続時精算課税で贈与した財産は将来、相続財産に足し戻され、相続税の課税対象になります。
相続税がかからなければ20%で課税された分の贈与税は全額還付されます。
質問者の場合、親の家を相続時精算課税を使って質問者に贈与すると、2500万円を超える分の1000万円に200万円の贈与税がかかります。
一方、父親が死亡した場合の相続税の非課税枠は法定相続人が3人ですから計4800万円あります。
父親の死亡時の金融資産が1000万円程度ならば相続税は課税されず、相続時精算課税でかかった贈与税は還付されるので、税負担はなくなります。
相続時精算課税は信託よりは複雑ではなく、高齢者の理解も期待できます。
売却時の譲渡所得税も考慮しながら、選択肢の1つとして検討してください。
2019.8.28 日経新聞より