2019.02.26
  人生100年時代
役職定年後の貯蓄形成 甘い見込み排し節約意識を
「老後に向け、どれぐらいの金額を自由に使ってよいでしょうか」。
家計相談に来た会社員のTさん(55)とパートで働く妻(54)。
Tさんは役職定年を迎え、収入が4割ほど減少。
今春に次男(22)が卒業し、就職と同時に実家を離れます。
「老後に海外旅行をするのが夢」と話しますが、食費が実に月11万円超。
これでは、老後の楽しみに十分なお金をためられません。
老後の楽しみに「海外旅行」を挙げるシニアも多いが…
妻はずっと家計簿を付けており、毎月の家計は数千円の黒字です。
しかし、教育費と住宅ローンの返済で貯蓄は大幅に減り、今は300万円弱です。
ただ、Tさんの退職金は2000万円ほど出る見込みなので、「老後資金は十分にある」と考えています。
「ねんきん定期便」を見ていると、年金は夫婦計320万円ほどはもらえそうで、生活基盤は問題ないと判断しています。
しかし、現実は甘くありません。
定期便の受給見込み額は、あくまで「収入が変わらなかった場合」が前提。
収入が4割も減ってしまったTさんが、影響を受けないはずはありません。
息子が家を離れたからと言って、どこまで支出を削減できるかも疑問です。
Tさんの計画に甘さが感じられたので、「老後資金が足りない可能性がある」と伝えました。
夫婦は驚いた様子で「老後資金をいくら確保すれば安心でしょうか」と聞いてきました。
そこで老後に必要な額を算出しました。
役職定年の減収分で年金は月当たり約1万円減り、1カ月の年金受給額は夫婦で26万円の見込みです。
仮に今より支出を抑えて月30万円で暮らしても、月4万円が不足します。
65歳から100歳までなら約1700万円が必要です。
加えて、病気や介護、リフォームなど突発的な支出に500万~1000万円を備えておかないと安心できません。